初日のこと・2 ~ウィーンで乗り継ぎ~ [はじめてのイタリア~ひとりでぇできたぁ~]
まぁ誤算といっても、「だからどうした」といわれれば返すことばもないくらいどうってことないはなしで、じっさいウィーンに降り立ったところで出発前の心境とかわりなく、昨年のフランス旅行で初めてのヨーロッパ上陸の地となったコペンハーゲン・カストロープ空港に到着したときほどの感慨はおこらない。
その昨年の経験上、乗り継ぎに関するこの後の流れはだいたいわかっている。オーストリアがシェンゲン協定国だということも了解していた。
さっさと入国審査へとむかい、ちゃっちゃとパスポートにスタンプをゲット。
はい、オーストリア入国でございます。
で、スタンプのデザインはどんなもんかと早速パスポートをペラペラと繰っていったら発見。
いやいや、やっぱり勉強が足りなかった。すべてわかったような気になっていても、まだまだ知らないことは多すぎる。
デンマークのスタンプとデザインがまったく一緒だった。違うのは出入国した都市・空港名の表記だけ。
なるほど、シェンゲン協定国の出入国スタンプは全部同じで、たとえフランス、イタリアのスタンプをゲットできたとしても、パスポートには同じ模様が増えるだけということか。
昨年のフランス旅行記で、
“欲しいスタンプがあったら直行便で行け”
などと書いたことが恥ずかしくなる。
しかし、こう同じデザインばかりになるとパスポートのいろどりもイマイチに思えてきて、スタンプラリーに力を入れる気も少々うせる。ま、海外旅行はヨーロッパだけに限られたものではないわけだが。
目的地、ミラノ・マルペンサ空港行きの出発は17時35分。乗り継ぎ時間は1時間30分あるのだが、日本出発前に説明されたように、ヨーロッパの空港での荷物検査は相当きびしいらしいので、空港内の売店には目もくれず早めに搭乗口へむかったら、案の定検査場には大行列ができていた。
行列に並んでもなかなか前に進めない。
しかし時間にはまだ余裕があるのでのんびりと、持っていたペットボトル入りジュースを捨てさせられたり、ベルトを外させられたり、靴を脱がせられたりでモタモタする外国人をながめていたら、ふと気がついた。
まわりに日本人が見あたらない。
成田発の便は、当然のことながら大半の乗客が日本人だったわけだが、そのほとんどが乗り継ぎ利用客ではなかったということか。
たいした荷物もなく、あやしい物など持ち合わせていないわたしは、何の問題もなくさっさと金属探知機をくぐり抜け、ミラノ行きの搭乗口へ着いたら、いよいよ日本人どころか東洋人の顔さえ見えなくなった。
慣れてしまうほどの海外経験はなく、いまだ日本語以外のことばをまともに理解できないわたしが、頼れそうなひとが誰もいないというこの状況に不安をおぼえないわけがないのだが。
きた。
やっとだ。
旅を本気で企て、航空券の予約やら準備をはじめてから3週間。
日本を飛び立ってから13時間。
ここにきてようやく海外旅行の非日常性とそれを味わうことの昂奮、昂揚を実感しはじめた。
不安は昂奮に隠されたのか、かき消されたのか、わたしが意識することはなかった。
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