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初日のこと・1 ~誤算~ [はじめてのイタリア~ひとりでぇできたぁ~]

 気を大きく持っていたのは確かだ。
 昨年のフランス旅行がつつがなく終わったことに味をしめ、「まぁどうにかなる」と、ナメてかかっていたことは間違いない。
 せっかくの個人旅行なんだからその利を生かし、出発前にすべての旅程をかっちり決めて日本で予約できるものはすべてしてしまうということもなく、今回はある程度の自由度を持たせた上で渡航に及んだ。
 まぁ先にいってしまうと、今回も大きなトラブルもなく無事帰国できたわけだが、誤算といえば誤算といえることが、初っ端に起こってしまった。

 ヨーロッパの旅も2回目。大きな気概も気負いもなく、たいして緊張感もないまま成田空港第1ターミナル到着。
 旅行会社のカウンターで航空券を受取り、続いてチェックインカウンターで荷物を預ける。そこで、
 「日本からヨーロッパまではいいが、ヨーロッパ内のフライトは検査が厳しくなっており、液体類の機内持込はほとんどできない。荷物の入れ替えをするなら今のうちに」
 との説明を受けるが、そもそもわたしが持ってきた荷物のなかに液体と呼べるものはシャンプーと歯磨き粉くらいのもので、それとて機内に持ち込むわけではなく、持ち込むものといえばパスポート、航空券、イタリアのガイドブック、そして文庫本を1冊。そう、1冊だけ・・・。

 事前調べでは、立ち寄るつもりでいるイタリアの美術館や教会、有料施設にはクレジットカードが使えない場所が多く、食事もマクドナルド漬けになることが予想されるため、先に現金を多めに用意。とりあえず3万円分両替して、ターミナル内のユニクロをひやかした後、いざ搭乗口へ。

 2月13日、11時40分発、ウィーン・シュヴェッヒャート空港行、オーストリア航空052便。

 古めの機体だったのでちょいとした不安感をもよおしたのだが、乗ってみたらその不安が的中。

 エコノミー席に個人用モニターがなかった。

 昨年のフランス旅行でスカンジナビア航空に乗って、往復ともにモニター付だったため、ある程度規模の大きい航空会社の長距離便なら個人用モニター付きは当たり前のものだと思っていたのだが、あまかった。
 ウィーンまで12時間30分のフライト。
 さて、どう時間をつぶすか。
 眠ってしまうのがいちばんではあるが、これも昨年同様、現地着が夜。
 予定ではウィーンで乗り継いで、ミラノ着が19時5分。遅くとも21時頃にはホテルに着き、翌日の観光のためにすぐに就寝。
 その予定のためには機内で寝るわけにはいかず、実際、前夜は10時間眠って成田空港に向かっているのである。
 昨年同様、個人用モニターでゲームをやりつづける気でいたため、持ち込んだ本は2、3時間あれば読了できそうな文庫本1冊のみ。わかってりゃもう2、3冊持ち込んでいたものを。
 イタリアのガイドブックも、出発前に読みつぶしている。
 天井から吊り下げられた機内共用モニターで上映される映画は、いちおうすべて日本語吹替えがあるものの、微妙に古い『森のリトルギャング』とか、じつに日本人の肌に合わなそうなコメディ映画で、観る気がまったく起こらない(いや、そもそもわたしは映画が嫌いだったのだ)。
 機内の音楽チャンネルでは、さすがオーストリア航空、ウィーンフィル専門チャンネルとモーツァルト専門チャンネルが用意されていた。もうこれしかない。
 もったいぶりながら、ちびちびと本を読み進めては、モーツァルトを聴きつづけ、機内食をたいらげちゃ、ウィーンフィル。
 前日10時間寝ていたとはいえ、さすがにこれでうつらうつらとし始めた。
 機内は3分の1程が空席で、わたしの隣りも空いている。ついでに前も空席でシートを倒されることもなく、エコノミーのくせにじつにゆったりできている。
 耳にはモーツァルト。
 機内食でいらぬ見栄を張って頼んだワインがまわっている。

 “ここで寝たら、今夜寝れないなぁ。明日たいへんになるなぁ”

 と、思いながらも、睡魔には勝てず、気付いたらウィーン到着4時間前。
 明日寝不足で観光することを思い少し憂鬱になるが、なんだかんだでけっきょく時間がつぶれたのはまぁよかった。
 それで本の残りを読んだら、少し眠って頭がすっきりしてるおかげで、ずんずんページが進みやがる。1時間も要さず読了。残り3時間強。ここからが地獄というかなんというか。
 覚醒した頭で3時間。これからカトリックの総本山に向かうというのに、なにもせず、ただ座って3時間すごすという禅の修業みたいなことをしながら、16時。
 定刻どおり、飛行機は無事ウィーン・シュヴェッヒャート空港に到着した。


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