読書もしてるんです [感想文]
以前このブログにも登場していただいた某女王様から、先日、久々にメールがきた。
“おれのことをかまってくれるのか”とドキドキしながら本文を読むと、
「柴門ふみの『ぶつぞう入門』はとうぜん読んでいるのだろう?」
――は? おれのことをかまってくれるわけじゃないのですか? すいません。読んだことありません・・・。
「“仏像マニア”がきいてあきれる。ブログにかまけて読書がおろそかになっているのではないか。この腑抜け野郎が」
――すいません。今度読んでみます・・・。
文庫になるくらいだから単行本はそれなりに売れたのだろうし、実際、話題にもなっていたそうだが、単行本が発売された2002年当時、すでに自分の見仏スタイルはほぼ確立しており、ガイド本などには頼らなくなっていたため、その存在に気付かなかった。
で、読んでみたわけだが。
『ぶつぞう入門』というタイトルではあるが、これで仏像の初歩知識が得られるなんてことはまずない。あくまで、柴門ふみが気に入った仏像をおもしろおかしく紹介するエッセイである(ちょっとした解説とガイドもあるが、ほんとうにちょっとしたもの)。
仏像関連エッセイとしては、どうしても我がバイブル『見仏記』と比較してしまうわけだが、やはり『見仏記』に比べると、中堅見仏人としては物足りなさを憶える。原稿枚数の制限もあるのだろうが、ひとつひとつの仏像、寺にまつわるエピソードがじつにあっさりしているのがなんとなく物足りないのだ。そのお手軽感が『入門』たる所以なのだろうし、最初からそれが狙いでもあるのだろうが。
もちろんエッセイとして読むぶんにはおもしろい。しかしあくまで女性視点であることを崩さず、仏像の好みもわたしとはずいぶんかけ離れていて、なかなか共感することができない。
要するにこの『ぶつぞう入門』は、“仏像に関して知識も興味もまったくないが、サイモンなら読んでみてもいい”と思える女性向けの本というわけで。
これで仏像に少しでも興味をもったなら、まず自分の目で仏像を見て、そして『見仏記』も手にとってみてはいかがかなと。
ちなみに。
『見仏記』であるが、単なる仏像初心者向けエッセイ・ガイドを期待して手を出したら、違和感を憶えるかもしれない。
シリーズを追うごとに“仏像エッセイ”が壮大な“旅行記”へと変貌していき、そしてその見仏旅行を通して、“友情とはなにか”“親子とはなにか”、ついには“生命とはなにか”という、深遠なテーマに話が及んでいく。
仏像に興味がないひとにも、読み応えはじゅうぶんにあるのでぜひおすすめしたい。
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