百寺巡礼 [TV観戦]
五木寛之の百寺巡礼
満願成就、百寺巡礼達成。最初が五木寛之の個人的思い入れのある室生寺だっただけに、最後も九州編ということで、出身地福岡のどこかゆかりのある寺へ行くのかなと思ったら、とくにそうでもなかったみたいで。
総集編にもあったが、この番組といえばやはり石段。いままで高い関心をよせて五木寛之の著書を読んだことはなかったが、彼が「石段マニア」を自称するに至ってから、わたしは親近感をおぼえるようになった。下記のようにタモリは本を出し、みうらじゅんは東京ドームのスライドショーで「いま石段がアツイ」と語り。やはり坂、石段に感情を揺り動かされてこそ、真の文化系といえる。
そして五木寛之の本分といえるこっちのほう。まだ全巻刊行されてないがついでに。
平成の『古寺巡礼』を期待して読み始めたのだが、うーん・・・。コレクターとしてはしょうがなく全巻買ってはいるが、満足できたのは第1巻だけで、それ以降は正直退屈なものであった。形態としてどうしても比べてしまうことになる、司馬遼太郎大先生の『街道をゆく』。こちらを読んでしまうと、どうも読みごたえがない。
著者も当然意識してのことだろうが、『百寺巡礼』はじつに平易でわかりやいことばで書かれている。宗教という曖昧模糊としたものをわかりやすいことばで書くというのは大変なことだし、仏教入門書として捉えればこれほどの良書はないのだが、逆にそれが仏教の奥深さ、重厚さを消してしまっている。
さらにその平易な文章には「詩」が感じられない。『街道をゆく』は随筆でありながらどこを切り取って読んでもそれが詩になっていて、全43巻まったく飽きさせることがない。
それぞれの寺にはそれぞれの歴史が当然あるわけで、書かれている内容ももちろん寺ごとに違うのだが、巻数が進むごとに、読後の印象が同じにものになってきてしまっている。そりゃ百寺もまわりゃ、パターンもなくなるだろうが、それにしても第1巻、第1寺のテンションを持続してほしかった。第1巻のまえがきには「百寺を達成する前にこの命が尽きるかも」なんてことが書かれてあり、その悲壮感たるや、こりゃ五木寛之の遺書がわりのシリーズになるかもと読む方にも力が入り、またその第1寺、室生寺も、上記のとおり著者の個人的な思い入れのある寺ということで、文章にも力が入っていたように感じられる(石段もあるしね。仏像ばかり観て、寺そのものにはあまり興味のないわたしでも、この室生寺は仏像関係なしで大好きな寺のひとつ。すばらしい仏像もあるのだが、それを忘れさせるくらいの雰囲気と良石段がある。ぜひ一度あしを運んでほしいといいたいところだが、あんまりひとが多いと、いい具合の寂れ感がぶち壊しになるので、なんともいえず)。
なんてえらそうなことを書いてきたが、こんな駄ブログよりよっぽどいい本なので、仏教をあまり知らないという方には特におすすめしたい。
五木さんと言えば、風の王国は読んだことある?
伝説のサンカ小説。俺は実はサンカ詳しいぜ。たぶん26歳では日本一詳しいと思う。知らないなら、うちのサイトに文章書くけど…。
で、お寺の巡りでもサンカがちょい入って来るんでしょ? 読んでないけどさ。
by こうすけ (2005-04-05 01:19)
風の王国は読んだことないけど、サンカについて書かれているのは知ってたようなそうでないような。サンカについても民俗学、修験道をかじると避けては通れない道だし、ちょっとだけなら知識はある。
で、百寺巡礼では直接サンカにはふれてないはず。おぼえてないだけかもしれないけど。「役小角が云々・・・以前『風の王国』を書いたとき云々・・・」というくだりが関西編であったような気がするが、それぐらいじゃなかったかな。
なんにしろ「これを読んで信仰心のないひとも寺へ足を運んでもらえたら」という仏教(史)ガイドの本だから、さすがにサンカを扱う余裕はないのかと。
by homerun (2005-04-05 04:53)