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空海と密教美術展 [感想文]

 東京在住ながら、仕事ではなく観光目的だけで幾度となく京都に訪れている身としては、いまさら東京であれやこれやを観るというのもなんだか負けなような気もするのだが、今日は仕事が休みだし、世間的には夏休みも終わった平日で空いているだろうし、晴れてはいるがそれほど暑くもないしで、結局好条件が揃ってしまった。こうなると、行く理由はないが、行かない理由もない。
 で、行ってきましたよ。
東京国立博物館 - 展示 日本考古・特別展(平成館) 「空海と密教美術」展

 いやぁ、やっぱり行ってよかった。
 所蔵している京都諸寺や高野山では、普段は公開されてないものがずらり。
 空海の書なんて実物はなかなか見られるもんじゃない。『聾瞽指帰』も、わたしが金剛峯寺へ行ったときも公開してなかったし。

 そしてなんといっても今展覧会の目玉、東寺講堂の仏像群。これは普段から公開されているものではあるが、ここでは間近で、しかも360度好きな方向から観ることができる。
 あの男前帝釈天も手を伸ばせば届くほどの距離に。だから、お堂の暗がりの中で遠目に観るだけではわからなかった細かい表現などが、はっきりと見てとれる。
 そこで、左足の親指が反り返っているのに初めて気がついた。半跏というリラックスした姿勢でありながらしっかりと漲らせている緊張感は、なるほど、こういう部分から発せられているわけだ。
 また、帝釈天が乗っている象の皮膚感も見事なものであった。

 というわけで、行ってよかった空海と密教美術展。あまり会期も残ってはいないが、興味があるひとはぜひ足を運んでもらいたい。

 ――が、もちろん、すべてのひとにおすすめできる類のものでもないわけで。ある程度予備知識を持っていないと楽しめないのは確かだ。
 そこで、なんにも知らずにこれから展覧会に行こうとするひと、あるいは東寺や高野山に行こうとするひとがいれば、司馬遼太郎『空海の風景』は必読。空海や密教についての教科書としてだけではなく、一歴史小説として傑作なので、読んでおいて損はないでしょう。

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

空海の風景〈下〉 (中公文庫)


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