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赤岩八合館の一夜 [はじめての富士登山]

 日暮れまでボケッと雲海を眺めてから、夕食。
 赤岩八合館名物、おかわり自由のカレーライス。ありがたくモリモリ食っておきたいところではあるが、そこは慣れない高地である。食い過ぎでの調子の崩し方は低地のそれとは違ってくるだろう。もちろんトイレの心配もある。
 ま、せっかくだからおかわりは1杯だけいただいておいて、気持ち悪くなる前に締めた。

 日が沈んだとたん、急激に気温が低下してきた屋外へ。

 見下ろすと、ふもとの街の灯り。
DSCF6219.JPG
 見上げれば、満天の星空。
 ほんと、天気に恵まれてなによりだ。

 ただ、これはこれで問題があって――

 赤岩八合館は、自らホームページで謳ってしまっているように、“すいている”ことがウリで、わたしもそれがここを選んだ大きな要因であった。
 だが、金曜の夜である。
 昨今の富士登山ブームにより、登山者の絶対数が増えたこともあるだろう。

 ――そして天気がいい。

 小屋は満員であった。寝床はまさに寿司詰め状態。ひとりに与えられているスペースは一畳あるかないか。
 防寒で外気が入らないようにすることと、スペース節約のためか、布団は端が隣と重なった形で敷かれており、少しでも寝返りを打とうものなら、隣に影響がでるのは必至。21時の消灯後は、その衣擦れの音すら小屋の中に響く。これでいて結構まわりに気を遣ってしまうわたしは、一度寝床に入ってしまうと、もう身じろぎもできなくなってしまった。
 そんななか起こる、トイレに立つ人の物音やら、いびきやらには、耳栓替わりに嵌めていたカナル型イヤフォンもあまり効果を発揮しない。

 あげくは、そう――この日は天気が良かったのだ。
 ここまでの道のりは暑くも寒くもなく、風すらほとんどなく、おかげで体力の消耗はほとんどなかった。
 さらに東京からのバスで、ガッツリ睡眠をとってしまっていた。

 幸か不幸か、体力が有り余っているわけだ。
 この状態で消灯21時というのもさすがに早すぎる。

 ――眠れるわけがない。

 “明日のためにも眠っておかなければ”という焦燥感が、眠りの淵からさらに遠ざける。
 布団の中は上記のとおり密閉状態で、自らの体温がこもって防寒どころかすでに暑苦しく、布団を剥がそうにも隣に迷惑がかかるからそれもできない。汗に変わってじわじわと奪われていく水分。渇く喉。イライラは増して――眠れるわけがない。

 そんな苦闘を続けること5時間。
 ウトウトすることもできないまま、ついに山頂で御来光を迎える予定の登山者が起床し始めた。
 同時にわたしも起床して、出発の準備を始める。
 午前2時。バイブレーションでセットしていた携帯電話の目覚ましタイマーを、動作しないまま切るのはなかなかにむなしいが、堂々と布団を出ることができ、その開放感でむしろ清々しい。

 先に記してしまうが、この後の山頂までの道のりも下山も天気に恵まれ、とくに苦労することはなかった。今回の行程、家を出てから帰るまでの間でいちばん苦しかったのは、登山そのものではなく、結局この山小屋の一夜ということになる。
 ま、同じ不眠なら、夜行登山するより、布団の中で横になっていられるだけまだマシだったと思うことにする。


 追記

 いちおうフォローしておきますが、富士山の山小屋はどこもこんなものだそうです。以上は、自身の神経質と体力の認識不足、そして混雑状況の見通しの甘さが招いた結果であり、赤岩八合館が特別どうということではありません。それどころか、女将さんをはじめ、スタッフの皆さんはどなたも明るく親切で、不快に思うことはなにひとつありませんでした。
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