9日目のこと・3&10日目のこと・1 ~フェズから夜行バスに乗り、客引きにひっかかる~ [はじめての複数国周遊~モロッコ編~]
再度マクドナルドで味を試したりして、ホテルに戻り荷物を引き取り、CTMバスターミナルにやってきたのは18時。バスの出発まで3時間もあるが、もうこれ以上することはないし、読書をしながら時間をつぶす。
そして時間が迫り、目当てのバスがやってくると、行き先表示には“Rissani”。
リッサニだと?――
わたしがこれから向かう西サハラ、シェビ砂丘は、現在地フェズから真南に位置し、そのルート上に、北からエルラシディア、エルフード、リッサニと街が並んでいる。
宿のスタッフに迎えにきてもらう予定の街はエルフード。
“リッサニ行き”ということは、どう考えたってバスはエルフードを通るだろう。
しかし、わたしはエルラシディアまでのチケットしか持っていない。券面には終点地の印字はされておらず、バスはてっきりエルラシディアまでしか行かないものだと思い込んでいた。
さてどうしたもんか。
このままではせっかく目的地まで乗っけていってくれるバスを、わざわざ途中で降りなければならないことになるのだが、バスは全席指定だから、追加料金を払うだけといった簡単な手続きでは済みそうになく、また確認しようにもチケット変更しようにも、発車間際で時間はなく、交渉するだけの語力もない故、それに踏み切る勇気がでない。前日にチケットを購入する際は、“とにかくエルラシディアまで出て、エルフードまでの手段はそこで考えよう”と思っていたため、購入窓口のお姉さんには“最終的にはエルフードまで行きたい”という意はまったく伝えていなかったのが悔やまれる。
――もうしょうがない。当初の予定どおり、エルラシディアに着いたらまた考えよう。
あきらめて乗り込んだバスは、フェズまでのバスと同様、小奇麗な普通の観光タイプ。問題ないといえば問題ないが、夜行となるとさすがに厳しい。たぶんほとんど眠れないだろうが、ま、しょうがない。自分で選んだ道だ。
フェズ出発時は5割程度の乗車率で隣席は空いており、お、こりゃ楽ちんかもと思いきや、次の停車地、大都市メクネスでほぼ満席になった。隣はまた現地人と思しきベールに顔を包んだご婦人。こちらはなにをするわけでもないのだが、なにが失礼に当たるかはわかりゃしないから、ずっと隣を意識しつつの道中。やっぱりたいして眠れず、ウトウトするまま、まだ夜も明けていないエルラシディアに到着した(乗務員に知らされ、慌てて下車したため時間を確認していなかったが、おそらく午前5時頃かと思われる)。
ターミナル併設のカフェが煌々と灯りをともしているだけで、街は暗闇に沈んでいる。
バスを降り、荷物を受け取り、さて、途方にくれる。ここからエルフードまでは、おそらくグランタクシー(モロッコでの主要交通手段になっている相乗りタクシー)を使うことになるのだろうが・・・。
ここで、バスの横でキョロキョロしているわたしにさっそく声をかけてきたのが、地元民・20代前半に見える男。英語で“日本人か? これからどうするのか?”と訊いてきた。
――いや、とりあえずエルフードまで行きたいんだけども。
“砂漠へ行くのか?”
――そうそう。
“宿は決まっているのか?”
――決まっているとも。
“よし、じゃ、そこの宿まで100DHで連れて行ってやるがどうだ?”
この値段は相場に対してどうなのかはわからない。もしかして法外な値なのかもしれないが、日本円にすればたいしたものではない。
この若者には信用に足るほどのものはなにも感じられない。最終的にはさらにふっかけてくるかもしれない。しかし、身の危険に及ぶようなことも、おそらくないだろう。そんな事例は渡航前の調べでは見当たらなかった。
いや、そんなことよりなにより、バスではほとんど寝ていないため、とにかく疲れていた。もうあんまり考えたくない。
話にのることにした。
“よーし。決まりだ。ちなみに宿はどこだ?”
わたしが予約している宿名を告げると、
“あぁ、あそこはダメだ。『キャンピング・サハラ』の方がいい”
あぁ、なるほど、そういうことか。そういうことならこっちも折れるわけにはいかない。日本人だと思ってナメるなよ(100DH払う時点で負けてるのかもしれないが)。
『キャンピング・サハラ』はガイドブックにも載っている砂漠の宿だったが、だいたいもう他を予約しているし、わざわざ変更する理由はない。
――いや、いいよ。予約してるんだから。
“じゃあ、キャンセルすればいい”
しつこい! これからも日本人相手に商売をするなら、もっと日本人気質を勉強しやがれ。
頑なに拒否をしていたら、やっと諦めてくれて、“もう少しここで待っていてくれ”と、カフェで待たされること15分ほど。男はさらにふたりの日本人男性を連れてきた。そういえば、彼らも同じバスに乗っていた。
聞くとふたりは大学生。わたしと同じで砂漠に行く予定で、宿は決めてなかったそうだが、さきほどの男にいわれるがまま、『キャンピング・サハラ』に決めてしまったとのこと。ま、宿が決まってなかったというのなら、それは渡りに舟ということで、そういう流れもしょうがないか。
後、日本人3人、男に連れられて歩くこと数十メートル。1台のグランタクシーと、3人のモロッコ人男性が待ちかまえていた。
ここでわたしに話を持ちかけてきた男が、3人の内のひとりをわたしに紹介し、“現地に着いたらこの男に100DH払え”と。見ると、学生ふたりには別の男が着いて、なにやら話している。この男達は、それぞれのガイドと、もうひとりはドライバーということか。
続いて話を持ちかけてきた男、
“よし、おれが話をつけてやったんだ。チップで70DH払え”
ときた。同乗はしないらしい。
あぁやっぱりこいつは宿の客引きか、ただのタクシー斡旋ということだったのか。
もういい。わかったわかった。おれの負けだ。なんの勝負かわからないが、負けだ。とにかくもうめんどくさい。
70DHを男に渡して乗車。男6人を乗せ、タクシーは未明のエルラシディアを発車した。
そして時間が迫り、目当てのバスがやってくると、行き先表示には“Rissani”。
リッサニだと?――
わたしがこれから向かう西サハラ、シェビ砂丘は、現在地フェズから真南に位置し、そのルート上に、北からエルラシディア、エルフード、リッサニと街が並んでいる。
宿のスタッフに迎えにきてもらう予定の街はエルフード。
“リッサニ行き”ということは、どう考えたってバスはエルフードを通るだろう。
しかし、わたしはエルラシディアまでのチケットしか持っていない。券面には終点地の印字はされておらず、バスはてっきりエルラシディアまでしか行かないものだと思い込んでいた。
さてどうしたもんか。
このままではせっかく目的地まで乗っけていってくれるバスを、わざわざ途中で降りなければならないことになるのだが、バスは全席指定だから、追加料金を払うだけといった簡単な手続きでは済みそうになく、また確認しようにもチケット変更しようにも、発車間際で時間はなく、交渉するだけの語力もない故、それに踏み切る勇気がでない。前日にチケットを購入する際は、“とにかくエルラシディアまで出て、エルフードまでの手段はそこで考えよう”と思っていたため、購入窓口のお姉さんには“最終的にはエルフードまで行きたい”という意はまったく伝えていなかったのが悔やまれる。
――もうしょうがない。当初の予定どおり、エルラシディアに着いたらまた考えよう。
あきらめて乗り込んだバスは、フェズまでのバスと同様、小奇麗な普通の観光タイプ。問題ないといえば問題ないが、夜行となるとさすがに厳しい。たぶんほとんど眠れないだろうが、ま、しょうがない。自分で選んだ道だ。
フェズ出発時は5割程度の乗車率で隣席は空いており、お、こりゃ楽ちんかもと思いきや、次の停車地、大都市メクネスでほぼ満席になった。隣はまた現地人と思しきベールに顔を包んだご婦人。こちらはなにをするわけでもないのだが、なにが失礼に当たるかはわかりゃしないから、ずっと隣を意識しつつの道中。やっぱりたいして眠れず、ウトウトするまま、まだ夜も明けていないエルラシディアに到着した(乗務員に知らされ、慌てて下車したため時間を確認していなかったが、おそらく午前5時頃かと思われる)。
ターミナル併設のカフェが煌々と灯りをともしているだけで、街は暗闇に沈んでいる。
バスを降り、荷物を受け取り、さて、途方にくれる。ここからエルフードまでは、おそらくグランタクシー(モロッコでの主要交通手段になっている相乗りタクシー)を使うことになるのだろうが・・・。
ここで、バスの横でキョロキョロしているわたしにさっそく声をかけてきたのが、地元民・20代前半に見える男。英語で“日本人か? これからどうするのか?”と訊いてきた。
――いや、とりあえずエルフードまで行きたいんだけども。
“砂漠へ行くのか?”
――そうそう。
“宿は決まっているのか?”
――決まっているとも。
“よし、じゃ、そこの宿まで100DHで連れて行ってやるがどうだ?”
この値段は相場に対してどうなのかはわからない。もしかして法外な値なのかもしれないが、日本円にすればたいしたものではない。
この若者には信用に足るほどのものはなにも感じられない。最終的にはさらにふっかけてくるかもしれない。しかし、身の危険に及ぶようなことも、おそらくないだろう。そんな事例は渡航前の調べでは見当たらなかった。
いや、そんなことよりなにより、バスではほとんど寝ていないため、とにかく疲れていた。もうあんまり考えたくない。
話にのることにした。
“よーし。決まりだ。ちなみに宿はどこだ?”
わたしが予約している宿名を告げると、
“あぁ、あそこはダメだ。『キャンピング・サハラ』の方がいい”
あぁ、なるほど、そういうことか。そういうことならこっちも折れるわけにはいかない。日本人だと思ってナメるなよ(100DH払う時点で負けてるのかもしれないが)。
『キャンピング・サハラ』はガイドブックにも載っている砂漠の宿だったが、だいたいもう他を予約しているし、わざわざ変更する理由はない。
――いや、いいよ。予約してるんだから。
“じゃあ、キャンセルすればいい”
しつこい! これからも日本人相手に商売をするなら、もっと日本人気質を勉強しやがれ。
頑なに拒否をしていたら、やっと諦めてくれて、“もう少しここで待っていてくれ”と、カフェで待たされること15分ほど。男はさらにふたりの日本人男性を連れてきた。そういえば、彼らも同じバスに乗っていた。
聞くとふたりは大学生。わたしと同じで砂漠に行く予定で、宿は決めてなかったそうだが、さきほどの男にいわれるがまま、『キャンピング・サハラ』に決めてしまったとのこと。ま、宿が決まってなかったというのなら、それは渡りに舟ということで、そういう流れもしょうがないか。
後、日本人3人、男に連れられて歩くこと数十メートル。1台のグランタクシーと、3人のモロッコ人男性が待ちかまえていた。
ここでわたしに話を持ちかけてきた男が、3人の内のひとりをわたしに紹介し、“現地に着いたらこの男に100DH払え”と。見ると、学生ふたりには別の男が着いて、なにやら話している。この男達は、それぞれのガイドと、もうひとりはドライバーということか。
続いて話を持ちかけてきた男、
“よし、おれが話をつけてやったんだ。チップで70DH払え”
ときた。同乗はしないらしい。
あぁやっぱりこいつは宿の客引きか、ただのタクシー斡旋ということだったのか。
もういい。わかったわかった。おれの負けだ。なんの勝負かわからないが、負けだ。とにかくもうめんどくさい。
70DHを男に渡して乗車。男6人を乗せ、タクシーは未明のエルラシディアを発車した。
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