7日目のこと・3 ~タンジェにて思う~ [はじめての複数国周遊~モロッコ編~]
港の敷地内にあったATMでキャッシングをして15時。敷地を出てすぐの場所の、モロッコ国営バス、CTMのオフィスに入ってみる。
この先、4日後に予約してある砂漠の宿までどういう日程で、どうやってたどり着くかは、その場で利用可能な交通手段によって決めていこうと考えていたのだが、そこは極度の貧乏性であるわたしだ。より多くの都市をみてまわりたい。なもんで、できれば、すぐにタンジェを出発して、メクネスで1泊、フェズで1泊、砂漠の手前の街エルラシディアで1泊――というのが理想であったが、残念ながらメクネス行きのバスは出発直後だったらしく、次の便は4時間後。
これは要するに夜行バスということだな。
宿泊費が浮くのはいいが、モロッコ初日から夜行バスはさすがにキツイ。民営バスという手もあるが、なにやら車内設備に当たり外れがあるそうなので、同様に、初日からあまり冒険はしたくないということで却下。
鉄道は、渡航前の下調べでは適当な時間の列車がなかったはず。
もういいや。メクネスはあきらめた。朝10時発のフェズ行きがあったので、もうそれで。はい、バスチケット購入。そしてタンジェ泊決定。
CTMのオフィスを出て、ガイドブックに載っている中級ホテルへ向かおうとすると、ひっきりなしに「コニチワー」と、“自称ガイド”が寄ってくる。なるほど、噂どおりだ。これでも減ったというから、以前はさぞめんどくさかったことだろう。
「ダイジョブダイジョブ、ノーサンキュー」みたいなことをいいかげんな英語だかフランス語だかを駆使しつつあしらっていたが(つい数時間前までスペイン語だったのが、ここからはフランス語とアラビア語である。なんとややこしい)、あるひとりのオッサンが、どう断ろうとも離れず、ついてきた。そしてしつこく片言の英語で話しかけてくる。
「どこへ行くんだ?」
ホテルですよ。
「もう決まってるのか? なんならおれが紹介してやる」
いやいや、決めてるからいいですよ。
「なんだ、どこだ。場所はわかるのか?」
ダイジョブダイジョブ、ノーサンキュー。
「いいから、そのガイドブックを見せてみろ」
近いし、もうわかるから、ダイジョブダイジョブ。
「いいからいいから、案内してやる」
あぁ、もうめんどくさい。しょうがなく、ホテルまでの数百メートル、オッサンとふたりの道中とあいなった。
そしてあっという間に目的のホテルに到着。そりゃそうだ、近いんだもん。
するとオッサン、やはりというか、
「案内してやっただろ。チップをよこせ」
富める者と貧する者。生活する、メシを食っていくということはどういうことなのか。国、文化による価値観の違い。
いろいろ考えたのは後の話で、この場では、もうめんどくさいだけ。
あぁあぁ、わかったよ。
手持ちでの最小硬貨だった5DHを渡した。
さらにオッサン、“こいつはカモになる”とでも思ったか、
「ハシシ、ハシシ」
ときた。
もう、なんだかなぁ。
日本から、いろんな意味で遠く離れたところまで来てしまったということを実感したものの、感慨を深くするだとか旅情を味わうだとかいう以前に、なんだか複雑な気分になる。
こんなに気楽にすすめてくるということは、現実に日本人の多くがやっているということだろう。知識として、こういうことが多いというのは知ってはいたが、いざそれを目の当たりにすると(誰かが吸っているのを見たわけじゃないが)、なんだか情けなくなってくる。そんな他の日本人と一緒にしないでくれ、オッサン。そもそもおれはタバコすら吸わない。
「のーすもーきんぐ」とかなんとか言って一蹴し、ホテルへ逃げ込んだ。
この先、4日後に予約してある砂漠の宿までどういう日程で、どうやってたどり着くかは、その場で利用可能な交通手段によって決めていこうと考えていたのだが、そこは極度の貧乏性であるわたしだ。より多くの都市をみてまわりたい。なもんで、できれば、すぐにタンジェを出発して、メクネスで1泊、フェズで1泊、砂漠の手前の街エルラシディアで1泊――というのが理想であったが、残念ながらメクネス行きのバスは出発直後だったらしく、次の便は4時間後。
これは要するに夜行バスということだな。
宿泊費が浮くのはいいが、モロッコ初日から夜行バスはさすがにキツイ。民営バスという手もあるが、なにやら車内設備に当たり外れがあるそうなので、同様に、初日からあまり冒険はしたくないということで却下。
鉄道は、渡航前の下調べでは適当な時間の列車がなかったはず。
もういいや。メクネスはあきらめた。朝10時発のフェズ行きがあったので、もうそれで。はい、バスチケット購入。そしてタンジェ泊決定。
CTMのオフィスを出て、ガイドブックに載っている中級ホテルへ向かおうとすると、ひっきりなしに「コニチワー」と、“自称ガイド”が寄ってくる。なるほど、噂どおりだ。これでも減ったというから、以前はさぞめんどくさかったことだろう。
「ダイジョブダイジョブ、ノーサンキュー」みたいなことをいいかげんな英語だかフランス語だかを駆使しつつあしらっていたが(つい数時間前までスペイン語だったのが、ここからはフランス語とアラビア語である。なんとややこしい)、あるひとりのオッサンが、どう断ろうとも離れず、ついてきた。そしてしつこく片言の英語で話しかけてくる。
「どこへ行くんだ?」
ホテルですよ。
「もう決まってるのか? なんならおれが紹介してやる」
いやいや、決めてるからいいですよ。
「なんだ、どこだ。場所はわかるのか?」
ダイジョブダイジョブ、ノーサンキュー。
「いいから、そのガイドブックを見せてみろ」
近いし、もうわかるから、ダイジョブダイジョブ。
「いいからいいから、案内してやる」
あぁ、もうめんどくさい。しょうがなく、ホテルまでの数百メートル、オッサンとふたりの道中とあいなった。
そしてあっという間に目的のホテルに到着。そりゃそうだ、近いんだもん。
するとオッサン、やはりというか、
「案内してやっただろ。チップをよこせ」
富める者と貧する者。生活する、メシを食っていくということはどういうことなのか。国、文化による価値観の違い。
いろいろ考えたのは後の話で、この場では、もうめんどくさいだけ。
あぁあぁ、わかったよ。
手持ちでの最小硬貨だった5DHを渡した。
さらにオッサン、“こいつはカモになる”とでも思ったか、
「ハシシ、ハシシ」
ときた。
もう、なんだかなぁ。
日本から、いろんな意味で遠く離れたところまで来てしまったということを実感したものの、感慨を深くするだとか旅情を味わうだとかいう以前に、なんだか複雑な気分になる。
こんなに気楽にすすめてくるということは、現実に日本人の多くがやっているということだろう。知識として、こういうことが多いというのは知ってはいたが、いざそれを目の当たりにすると(誰かが吸っているのを見たわけじゃないが)、なんだか情けなくなってくる。そんな他の日本人と一緒にしないでくれ、オッサン。そもそもおれはタバコすら吸わない。
「のーすもーきんぐ」とかなんとか言って一蹴し、ホテルへ逃げ込んだ。
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