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5日目のこと・4 ~AVEのチケット購入とはじめてのバル~ [はじめての複数国周遊~スペイン編~]

 急ぎ足のこの旅。今晩は、スペイン2晩目にしてマドリードでの最後の夜。明日朝には早くもアンダルシアへ発つ予定。
 そのための、スペイン高速列車AVEのチケットを買いにアトーチャ駅へと向かった。
 すべての列車のチケットを自動券売機で購入できたイタリアとは違い、スペインでは、自動券売機で購入できるのは近郊列車のチケットだけで、長距離列車の場合、販売窓口で係員との対面による購入をしなければならない(あくまで2009年2月時のはなし。現在は知りません)。
 いやー、めんどくせー。
 が、ここを乗り切らなくては旅も先に進まないので、とりあえず長距離列車専用の販売所へ足を踏み入れる。
 順番待ちの整理券を取り、記載された番号と、現在受付中の番号を見比べる。加えて客の回転をしばらく見てみるに、どうやらわたしの順番がまわってくるまでかなりの時間がかかりそうだ。
 いくつかある窓口のすべてでスペイン語が飛び交っていて、英語が通じるのかはわからないので、待っている間に、乗車日、列車番号、時間、行き先、席種を書いたメモを用意し、手持ちのスペイン語会話集で、必要になりそうな単語を予習しておく。
 そうこうしている内に20分。ようやくわたしの番がまわってきて、向かった窓口の担当は20代後半に見える女性。ま、せっかく準備したのだ、英語が通じるか確認する前にさっさとメモを出し、出まかせでスペイン単語を発していたら、あっけなく希望通りのチケットの購入完了。
 ビビる必要などなかった。どうにかなるもんだ。

 その後、地下鉄に乗りソル駅へ。夜9時をまわっていた。
 “ビビる必要なし”といえば、これもそうだ。なんだか当たり前のように夜の地下鉄に乗っているが、渡航前の心境を思うとバカらしくなる。とにかく人も多く、怖い雰囲気は感じられない。

 さて、気が大きくなったついでに、ひとつ冒険してみようか。
 マドリード最後の夜である。せっかくの機会だ。

 勇気を出して、夜のバルに入ってみることにする。

 過去のヨーロッパ旅行では度々ワインを口にしてきたが、ほとんどはスーパーで買ったものを宿に持ち帰って飲んでいただけ。それを外で、ましてや夜の酒場で立ち呑みなんぞ、過去の自分からすれば気のふれた行為にしか思えない。
 が、なにしろ今わたしは気が大きくなっている。
 何事も経験だ。
 よしいったろうではないか。どんとこい、スペインの酒飲みどもよ。
 ま、しかし、元が世界最小級だったわたしの心臓だ。多少大きくなったところで、それほどの暴挙に出られるわけもない。
 宿の近くに、手持ちのガイドブックにも載っているバルがあったので、無難にそこに入ってみることにする。


 “Museo del Jamon”なる、市内にチェーン展開しているという人気店。外から見ても仕事帰りのビジネスマン等で賑わっているのがわかる。日本のチェーン系居酒屋同様、逆にそれが、ひとり呑みの場違い感を浮き彫りにするようで、入店に躊躇してしまうのだが、ええい、ままよ。いったれ。
 勢いをつけて入店した。
 ほぼ満員に近い店内。カウンターにも人がびっしりな中、なんとか隙間を見つけ出し、そこに入り込み、張り付く。
 ひじょうにありがたいことに、メニューが写真と番号付きで大きく店内に掲示されている。わけのわからないタパスが並ぶ中から、近くのバーテン(というのか?)のおっさんに、いちおうそれっぽい発音で品名と番号を告げ注文。

 うん、ベッタベタなのはわかってる。こんなもん地元民は誰も食わないだろうし、実際、あたりを見渡しても誰も食ってない。しかし初めての土地で初めての料理を注文するにあたっては、どんなに恥ずかしくても、それこそ“旅の恥はかき捨て”。

 「What’s the purpose of your visit?」

 おふこーす! さいとしーんデゴザイマス!!

 食にこだわりのまったくないわたしではあるが、それは今までこういう場に入る勇気と機会がなかっただけのこと。だから一線を越えさえすれば、それなりのこだわりを発揮する素地はあるのだ。あとはどっぷり観光客気分に浸るまで。
 入店した時点で一線は越えている。もうここまでくれば、王道を行くのがスジであろう。

 スペインといえば、もうこれしかない――
20090206222207.jpg
 ――生ハムメロン。メニューにあったんだから、これは素直に注文せざるをえないだろう。
 ストレートのワインでなく、サングリアに逃げてしまってるあたりも、お子ちゃま舌を露呈しているようでビミョーに恥ずかしいが――いやいや、だから“旅の恥はかき捨て”だ。

 生ハムは生ハム、メロンはメロン。味はそれ以上でも以下でもなく、一緒に食ったところで、“あぁ、生ハムとメロンだな”ぐらいにしか思えない。ま、要するに大して美味くもないということなんだが、そこはそれ。勇気を出して、初めてヨーロッパ酒場にチャレンジした自分に酔って、旨みは何割か増しになっていた。

 ちなみにカウンターにいる客の中には、わたし同様、ひとり呑みしているオッサンもちらほらと見受けられた。ちょいと安心しそうにもなったが、よくよく見ると、どいつもこいつも吉野家で冷酒だけ頼んでぐったりしているジジイと同じ雰囲気を醸し出している。
 あぁなんだかなぁ、と、ひとりサングリアをすすりながら複雑な気分になる、マドリード最後の夜であった。
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