3日目のこと・5 ~いざフィレンツェ~ [はじめてのイタリア~ひとりでぇできたぁ~]
午後4時、サンタ・ルチア駅に到着。
ことばのわからない異国の地で間違った列車に乗ってしまったら面倒なことになる。まずは予約した列車が何番線から発車するのか、出発予定掲示板を確認する。
が、ちょいと困ったことに列車番号の表示がない。ミラノ中央駅では表示されてたのに・・・。
表示されているのは、発車時刻、終着駅名、列車種別(ユーロスターやらインターシティやら普通列車だとか)、発車予定ホーム番号。ということで、予約している列車がどれに該当するのか確認するための手がかりは、発車時刻、終着駅名、種別ということになる。まぁこれだけわかればじゅうぶんであるし、実際、予約している列車の発車予定時刻である“16:32”のユーロスターの表示もあったのだ。その列車でまず間違いないのだが、どうにも不安をかきたてるのが、その終着駅表示が、わたしの目的地であるフィレンツェ、サンタ・マリア・ノヴェッラ駅ではなく、ローマ、テルミニ駅であることだった(ちなみに昨日乗った列車はヴェネツィアが終着駅だった)。
まったく、列車番号さえわかれば一発でわかるものを。
これで手がかりは、“16:32発”“ユーロスター”に絞られてしまった。
更にこれにとどまらず。
昨日の今日である。
昨日のミラノでの遅延でイタリアにおける時間のルーズさを痛感したわたしは、この時間表示にどうにも絶対的な信頼をおけない。
さて、これで確かな手がかりは“ユーロスター”のみで、あとは“発車時刻がなんとなく同時間帯”、“終着駅がなんとなく同方向”、というだけになってしまった。
まったく、困ったことです。
いやまぁ、ここサンタ・ルチア駅は、ヨーロッパの主要駅によくある、頭端型(っていうんだっけ? いわゆる櫛型のやつ)プラットホームで、なおかつ複々線にもなっていないようなので、2列車の同時刻発車というのはまずないだろうし、だいたい、他に16:32発のユーロスターなんて表示されていない。まずこの列車で間違いはないはずだ。
・・・などと考えること数十秒。
こういう迷いや不安も旅の醍醐味ではあるが。
あー、めんどくさい。
駅員に確認するのが手っ取り早いって話だ。
わたしが予約していると思しき列車はすでに入線していて、その近くにいた駅員をつかまえ、列車を指差し、予約書をみせながら、
「この列車でいいのですか?」
と片言の英語で問うと、駅員は、
「シー、シー、間違いないですぜ」
と、イタリア語と片言の英語で答えてくれた。
ま、カンタンだったんだよ、こんなの。
売店でおやつと飲み物を買ってから乗車。
そして昨日の遅延が嘘のように、16:32、定刻どおり発車したユーロスターは暮れゆくベネト地方を走る。
エミリア・ロマーニャを抜け、トスカーナに入った頃にはすっかり日も落ちて景色は見えず、地方色の移り変わりを感じることはできない。
そんなこんなで3時間弱の乗車。
フィレンツェ、サンタ・マリア・ノヴェッラ駅に到着した。
午後7時30分。
これから旅をする人、旅を終えた人、家路につく人。まだまだ人出も多く、にぎやかな駅構内。そこにあったマクドナルドで晩飯をすませてから、ホテルへとむかう。
なるホテル。
この部屋代がかなり安い。日本円で5000円弱。昨今のユーロ高を考慮すれば、ホテル予約サイトでの紹介写真からは想像もつかないほどの価格である。オフシーズン、しかも直前予約での投売り価格とはいえ、それでもヴェネツィアやローマの同等ホテルに比べても2、3割は安い。
ちなみに、これからフィレンツェで4泊することになる。
せまい区域に見どころが詰まっているフィレンツェでそんなに長居は必要ないのだが、安いこのホテルでできるかぎりの泊数を稼ぎたいがため、この日のように夜着、次の目的地ローマへは朝発、実質4泊3日のフィレンツェ滞在という旅程を組んだという次第だ。
地図を確認しながらゆっくり歩いて、駅から15分で到着。
あまりにも料金が安いので、紹介写真ほどのキレイな部屋が割り振られるわけもないことは覚悟していたが、 チェックインして、通された部屋は、
三十路男ひとりで泊まるにはなんだか恥ずかしいくらいの、なかなかにステキな部屋であった。
道路側に面していてちょいとうるさかったり、よくみると汚れが目についたり、バスルームの扉がちゃんと閉まらなかったり、給湯がタンク式のため長時間にわたり湯を出せなかったりで(男のひとり使用でそんなに湯を使うことなどないから、これはまったく問題なし)、価格相応の部分があるのは否めないが、それでも海外のホテルに、日本の同価格帯ホテルと同じサービスを求めるのは間違っていると、乏しい海外経験ながら学んでいる。
いやもうほんと、男のひとり旅ならこれでじゅうぶん。贅沢すぎるくらいだ。しかも安い。
こいつは当たりだったな。
これから4泊。満足のいく滞在ができることを予感しつつ、床についた。
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