この道ずっとゆけば [はじめてのアメリカ本土上陸~現地からこんにちは~]
えぇ、まだ帰りませんよ。もう来られない可能性が高いので、行けるところにはなるべく行きたい。
で、もったいぶったってすぐ下に画像も上げるし、しょうがないので云っちゃうが、グランドキャニオンに行くんですよ。
ロサンゼルスからグランドキャニオンまでの道のりは、自動車免許も金もないわたしには公共交通機関の個人手配による乗り継ぎしかなく、鉄道だろうがバスだろうが、これがまたひじょうに過酷なスケジュールになっている。
アメリカ人にもこの方法はあまり一般的ではないらしく、ロスの宿をチェックアウトする際のフロントのおっさんとの会話――
「次どこ行くの?」
「グランドキャニオンっす」
「ドライブ? あいや、あんた車じゃないよね?」(この宿はモーテルだったので、わたしが自動車を使ってないことを知っている)
「トレインっす」
「は? もしかしてアムトラック? はぁ、まぁよい旅を」
なにやらロスから鉄道でグランドキャニオンまで行けるのを知らない、あるいは英語をろくに喋れない日本人がひとりでたどり着くのは難しい道のり、という認識のような口ぶりであった。
いちおう、『地球の歩き方』にも載っている行き方だし、もうすでに往復の交通手段はすべて予約しているし、だいじょうぶなはずなんだが、ただ、もしかしたらこのあと待ち受ける過酷なスケジュールを、おっさんは知っていたのかもしれない。
たとえばそう、この列車が夜行だということとかを。
18時発。
席の隣にはいかつい白人のおっさん。
寝たんだか寝てないんだかわからない状態で10時間揺られ、朝4時過ぎ。降ろされたのがウィリアムズ・ジャンクションという、駅というか、停車場というか。
ほんとうになにもない。林の中に照明とこの看板があるだけ。おそらく、次のグランドキャニオンへの交通機関への乗り換えのためだけに設置された停車場と思われる。
そしてここで降りたのはなんとわたしひとり。あの巨大な列車がほぼ満員だったのに、わたしひとり。『地球の歩き方』にも載っているのに。いやこの手段、ほんとうに特殊なのかもしれない。
で、その次の交通手段、グランドキャニオン鉄道の駅までのシャトルバスとして大型ワゴン車と運転手のおっさんが待っていた。
ここで降りたのがわたしひとりで、写真を撮ろうとしているわたしをおっさんが待っているということにやっと気づいて、慌てたらピンぼけという。
どうやらわたしが英語を喋れないと察したおっさんが話しかけてくることもなく、ふたりきり、車内が気まずい雰囲気のまま、車は舗装もされていない林道をとおりぬけ、ウィリアムズの街に入り、グランドキャニオン鉄道が経営するホテルに着いた。
ここのホテルのロビーのソファで仮眠をとったりして3時間待ち。過酷だ。
夜が明けて、いよいよグランドキャニオン鉄道。
このグランドキャニオン鉄道。がっつり観光列車だということを知ったのが、すべて予約を完了して旅程をかえられなくなってからのこと。
まずはショーを観ろ、と。
だってチケットに含まれてるんだもの。
まあ、ここまではいい。
いよいよ列車に乗り込み、逃げ場がなくなって。
いざ出発となると、次は客車一両ごとに担当者がついていて、マイクでいろいろ説明や観光案内をしてくれるのだが――
――案の定、客いじりが始まる。しかも全員。
わたしの番がまわってきて、とりあえず“英語わからないので次いってくれ”アピールをするも、「ほら、スマホ持ってるでしょ、翻訳できるでしょ」と。
それは精一杯のサービス精神なんでしょう。わかる。わかるし、ありがたいけども、世界にはいろんな気質の人びとがいるということもわかっていただきたい。
過酷だ。
まだある。
「ほらみんな知ってるでしょ?」と、カントリーソングを。
いや知らねぇし。
しかし、車内で大合唱が始まった。
あぁそうだ。カントリーソングなら知ってるのだ。アメリカの一般的白人なら。
車内を見渡すと、ほぼ中年以上の白人。もちろんひとり客なんてわたししかいない。観光列車に乗ってグランドキャニオンへ行こうなんぞするのは、ある程度ふところに余裕のある、トランプが勝ってしまうような「アメリカが世界のすべて」だと思っている文化の中にいる、カントリー好きのこういう人たちなのだろう。
過酷だ。
いやすいません。こういうものと知らず、のんびり鉄道旅を決め込んで予約してしまったわたしがぜんぶ悪いんです。郷に入っては郷に従わなくてはならないし、このお兄さんもお嬢さんも、「さあみんなで楽しもうよ」と精一杯やっているのだろうが、さすがに性質が違いすぎてどうにもならない。
お礼というよりお詫びのつもりで、お兄さんにチップを渡した。
ちなみに、途中で『カントリーロード』の大合唱があり、お、これならわかるぜ、と思ったが、とっさに思い浮かぶのは『耳をすませば』版という。
「日本にはな、素晴らしい訳詞があってだな、もはやオリジナルを超えてるんだぜ」とは、もちろん言えるわけもなく、心の中に留めておいた。そもそも英語がわかんねぇし。
いちおうフォローしておきますが、ある程度の英会話力があって、人見知りしない性格であれば絶対に楽しめるはずなので、グランドキャニオンに行かれる方は検討してみてはいかがでしょうか。自動車でウィリアムズに前乗りするのが前提ですが。
で、もったいぶったってすぐ下に画像も上げるし、しょうがないので云っちゃうが、グランドキャニオンに行くんですよ。
ロサンゼルスからグランドキャニオンまでの道のりは、自動車免許も金もないわたしには公共交通機関の個人手配による乗り継ぎしかなく、鉄道だろうがバスだろうが、これがまたひじょうに過酷なスケジュールになっている。
アメリカ人にもこの方法はあまり一般的ではないらしく、ロスの宿をチェックアウトする際のフロントのおっさんとの会話――
「次どこ行くの?」
「グランドキャニオンっす」
「ドライブ? あいや、あんた車じゃないよね?」(この宿はモーテルだったので、わたしが自動車を使ってないことを知っている)
「トレインっす」
「は? もしかしてアムトラック? はぁ、まぁよい旅を」
なにやらロスから鉄道でグランドキャニオンまで行けるのを知らない、あるいは英語をろくに喋れない日本人がひとりでたどり着くのは難しい道のり、という認識のような口ぶりであった。
いちおう、『地球の歩き方』にも載っている行き方だし、もうすでに往復の交通手段はすべて予約しているし、だいじょうぶなはずなんだが、ただ、もしかしたらこのあと待ち受ける過酷なスケジュールを、おっさんは知っていたのかもしれない。
たとえばそう、この列車が夜行だということとかを。
18時発。
席の隣にはいかつい白人のおっさん。
寝たんだか寝てないんだかわからない状態で10時間揺られ、朝4時過ぎ。降ろされたのがウィリアムズ・ジャンクションという、駅というか、停車場というか。
ほんとうになにもない。林の中に照明とこの看板があるだけ。おそらく、次のグランドキャニオンへの交通機関への乗り換えのためだけに設置された停車場と思われる。
そしてここで降りたのはなんとわたしひとり。あの巨大な列車がほぼ満員だったのに、わたしひとり。『地球の歩き方』にも載っているのに。いやこの手段、ほんとうに特殊なのかもしれない。
で、その次の交通手段、グランドキャニオン鉄道の駅までのシャトルバスとして大型ワゴン車と運転手のおっさんが待っていた。
ここで降りたのがわたしひとりで、写真を撮ろうとしているわたしをおっさんが待っているということにやっと気づいて、慌てたらピンぼけという。
どうやらわたしが英語を喋れないと察したおっさんが話しかけてくることもなく、ふたりきり、車内が気まずい雰囲気のまま、車は舗装もされていない林道をとおりぬけ、ウィリアムズの街に入り、グランドキャニオン鉄道が経営するホテルに着いた。
ここのホテルのロビーのソファで仮眠をとったりして3時間待ち。過酷だ。
夜が明けて、いよいよグランドキャニオン鉄道。
このグランドキャニオン鉄道。がっつり観光列車だということを知ったのが、すべて予約を完了して旅程をかえられなくなってからのこと。
まずはショーを観ろ、と。
だってチケットに含まれてるんだもの。
まあ、ここまではいい。
いよいよ列車に乗り込み、逃げ場がなくなって。
いざ出発となると、次は客車一両ごとに担当者がついていて、マイクでいろいろ説明や観光案内をしてくれるのだが――
――案の定、客いじりが始まる。しかも全員。
わたしの番がまわってきて、とりあえず“英語わからないので次いってくれ”アピールをするも、「ほら、スマホ持ってるでしょ、翻訳できるでしょ」と。
それは精一杯のサービス精神なんでしょう。わかる。わかるし、ありがたいけども、世界にはいろんな気質の人びとがいるということもわかっていただきたい。
過酷だ。
まだある。
「ほらみんな知ってるでしょ?」と、カントリーソングを。
いや知らねぇし。
しかし、車内で大合唱が始まった。
あぁそうだ。カントリーソングなら知ってるのだ。アメリカの一般的白人なら。
車内を見渡すと、ほぼ中年以上の白人。もちろんひとり客なんてわたししかいない。観光列車に乗ってグランドキャニオンへ行こうなんぞするのは、ある程度ふところに余裕のある、トランプが勝ってしまうような「アメリカが世界のすべて」だと思っている文化の中にいる、カントリー好きのこういう人たちなのだろう。
過酷だ。
いやすいません。こういうものと知らず、のんびり鉄道旅を決め込んで予約してしまったわたしがぜんぶ悪いんです。郷に入っては郷に従わなくてはならないし、このお兄さんもお嬢さんも、「さあみんなで楽しもうよ」と精一杯やっているのだろうが、さすがに性質が違いすぎてどうにもならない。
お礼というよりお詫びのつもりで、お兄さんにチップを渡した。
ちなみに、途中で『カントリーロード』の大合唱があり、お、これならわかるぜ、と思ったが、とっさに思い浮かぶのは『耳をすませば』版という。
「日本にはな、素晴らしい訳詞があってだな、もはやオリジナルを超えてるんだぜ」とは、もちろん言えるわけもなく、心の中に留めておいた。そもそも英語がわかんねぇし。
いちおうフォローしておきますが、ある程度の英会話力があって、人見知りしない性格であれば絶対に楽しめるはずなので、グランドキャニオンに行かれる方は検討してみてはいかがでしょうか。自動車でウィリアムズに前乗りするのが前提ですが。
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