7日目のこと・4 ~タンジェを歩く~ [はじめての複数国周遊~モロッコ編~]
飛び込んだのは、Hotel El Djeninaなる、ガイドブックによると、ごくごく普通の中級ホテル。
で、飛び込んだはいいが、実は海外の宿を、文字通り“飛び込み”で決めるのは、これが初めてである。そもそも対人恐怖症の気があるコミュニケーション不全のわたしが、不自由な外国語による交渉をしなければならないということに、渡航前からこの場面を想像して相当ビビリまくっていたのだが、躊躇するどころか、前述のオッサンから逃げ出すために飛び込んでしまったおかげで、すでに目の前にはレセプションのオッサンが。
ええいままよと、勢い、
「どぅ ゆう はぶ えにぃ るーむ?」
とかなんとか、てきとーな英語で訊いたら、あっさり通じた。ま、観光国モロッコの中級ホテルである。そりゃ英語ぐらい通じて当然か。一応、同様の意味のフランス語とアラビア語も覚えておいたのだが、不要だった。ただ、勢い込んでの出まかせだったため、有事の際、果たしてうろ覚えのフランス語やアラビア語を咄嗟に出すことができたかどうかはわからない。
念のため、部屋も見せてもらったら――
――ガイドブックどおり、ごくごく普通、いや、過去泊まってきたヨーロッパのホテルと比べても、なんら遜色のない、清潔感と広さを持った部屋だった。もちろん、値段も安い。文句なく今夜の宿をここに決め、チェックイン。
荷物を置き、さっそく初のアフリカ街歩きに繰り出してみる。
イスラム国の見所といえば、どんな国、土地でも、旧市街・メディナになるわけで、わたしも向かってみたのだが、いざ目の前にしたら、ビビって躊躇してしまった。
城壁に囲まれたメディナの入り口の門の奥に、異世界が見えていた。一度入ったら、そこから抜け出せない――。
他の都市のメディナに比べたら、タンジェのそれはこじんまりしていて迷うことはないとのことなのだが、アフリカ初日の気弱な日本人には、まだちょいとキビシイ。この先に訪れる予定である、フェズ、マラケシュのメディナの印象をより鮮烈にするためにも、ここは遠慮しておこう――と、自分に言い訳をカマして、新市街へと逃げ出した。
地中海を見下ろす丘の上にある新市街をふらふらしていると、マクドナルドを発見。イスラム教国とはいえ、さすがにユーロナイズされた国、モロッコである。ちょうど“晩飯はどうしようか”と考えていた矢先でもあった。食い物になんのこだわりもないわたしは、迷わず突入。
店内には、これまた宗教だとか民族だとか欧米文化の流入だとかには大してこだわりがないのであろう若者でごった返していた。
恥ずかしながら、当時、“イスラム教は牛食禁止”(それはヒンドゥー教ですね)と勘違いしていたわたしは、遠慮してチキンフィレオを注文。
テラス席があったので、タンジェの街と地中海を見下ろしながら、優雅に夕餉。
マクドナルドを出て、再び街歩きをしながらふらふらと港前まで戻り、日暮れ頃、広場にあった、外から見るに雰囲気の良さそうなカフェに入って、また休憩。席に着いたらすぐにメニューが出てきた。明朗会計。ボラれる心配はなさそうだ。
4年前のフランス旅行で磨き上げた口、舌の動かし方を思い出しながら、
「あん きゃっふぇおれ すぃるぶぷれ~」
と、注文。
出てきたきゃっふぇは、とくに美味くも不味くもなく。
店内のテレビで、何を言ってんだか当然さっぱりわからないアラビア語のニュースをぼけーっと見たり、ガイドブックをペラペラ捲りながら明日の予習をしたりで30分ほど過ごし、店を出る。
夜食を買うため、カフェの近くの小さな売店に入ってみたら、値札もなにもない。こここそボラレ時かと不安になりなるが――ボラれたとしても日本円で100円200円のことで、致命的ではないだろう――いや、金額の問題ではなく、ボラれるということ自体、日本人がナメられているようで悔しい――とかなんとかウダウダと考えつつ、とくになにもいわずにコーラとスニッカーズ風の菓子、そして値段がわからないまま恐る恐る20DH紙幣を店のあんちゃんに差し出したら、しっかり10数DHのお釣りが返ってきた。そうだ、そんな悪人なんて、そうそういるもんじゃないんだ。
ホテルに帰って、コーラの栓を開ける。
欧米文化の象徴のような飲み物に、プリントされたアラビア語。これもある意味、モロッコという国をよく表しているような気がする。
で、飛び込んだはいいが、実は海外の宿を、文字通り“飛び込み”で決めるのは、これが初めてである。そもそも対人恐怖症の気があるコミュニケーション不全のわたしが、不自由な外国語による交渉をしなければならないということに、渡航前からこの場面を想像して相当ビビリまくっていたのだが、躊躇するどころか、前述のオッサンから逃げ出すために飛び込んでしまったおかげで、すでに目の前にはレセプションのオッサンが。
ええいままよと、勢い、
「どぅ ゆう はぶ えにぃ るーむ?」
とかなんとか、てきとーな英語で訊いたら、あっさり通じた。ま、観光国モロッコの中級ホテルである。そりゃ英語ぐらい通じて当然か。一応、同様の意味のフランス語とアラビア語も覚えておいたのだが、不要だった。ただ、勢い込んでの出まかせだったため、有事の際、果たしてうろ覚えのフランス語やアラビア語を咄嗟に出すことができたかどうかはわからない。
念のため、部屋も見せてもらったら――
――ガイドブックどおり、ごくごく普通、いや、過去泊まってきたヨーロッパのホテルと比べても、なんら遜色のない、清潔感と広さを持った部屋だった。もちろん、値段も安い。文句なく今夜の宿をここに決め、チェックイン。
荷物を置き、さっそく初のアフリカ街歩きに繰り出してみる。
イスラム国の見所といえば、どんな国、土地でも、旧市街・メディナになるわけで、わたしも向かってみたのだが、いざ目の前にしたら、ビビって躊躇してしまった。
城壁に囲まれたメディナの入り口の門の奥に、異世界が見えていた。一度入ったら、そこから抜け出せない――。
他の都市のメディナに比べたら、タンジェのそれはこじんまりしていて迷うことはないとのことなのだが、アフリカ初日の気弱な日本人には、まだちょいとキビシイ。この先に訪れる予定である、フェズ、マラケシュのメディナの印象をより鮮烈にするためにも、ここは遠慮しておこう――と、自分に言い訳をカマして、新市街へと逃げ出した。
地中海を見下ろす丘の上にある新市街をふらふらしていると、マクドナルドを発見。イスラム教国とはいえ、さすがにユーロナイズされた国、モロッコである。ちょうど“晩飯はどうしようか”と考えていた矢先でもあった。食い物になんのこだわりもないわたしは、迷わず突入。
店内には、これまた宗教だとか民族だとか欧米文化の流入だとかには大してこだわりがないのであろう若者でごった返していた。
恥ずかしながら、当時、“イスラム教は牛食禁止”(それはヒンドゥー教ですね)と勘違いしていたわたしは、遠慮してチキンフィレオを注文。
テラス席があったので、タンジェの街と地中海を見下ろしながら、優雅に夕餉。
マクドナルドを出て、再び街歩きをしながらふらふらと港前まで戻り、日暮れ頃、広場にあった、外から見るに雰囲気の良さそうなカフェに入って、また休憩。席に着いたらすぐにメニューが出てきた。明朗会計。ボラれる心配はなさそうだ。
4年前のフランス旅行で磨き上げた口、舌の動かし方を思い出しながら、
「あん きゃっふぇおれ すぃるぶぷれ~」
と、注文。
出てきたきゃっふぇは、とくに美味くも不味くもなく。
店内のテレビで、何を言ってんだか当然さっぱりわからないアラビア語のニュースをぼけーっと見たり、ガイドブックをペラペラ捲りながら明日の予習をしたりで30分ほど過ごし、店を出る。
夜食を買うため、カフェの近くの小さな売店に入ってみたら、値札もなにもない。こここそボラレ時かと不安になりなるが――ボラれたとしても日本円で100円200円のことで、致命的ではないだろう――いや、金額の問題ではなく、ボラれるということ自体、日本人がナメられているようで悔しい――とかなんとかウダウダと考えつつ、とくになにもいわずにコーラとスニッカーズ風の菓子、そして値段がわからないまま恐る恐る20DH紙幣を店のあんちゃんに差し出したら、しっかり10数DHのお釣りが返ってきた。そうだ、そんな悪人なんて、そうそういるもんじゃないんだ。
ホテルに帰って、コーラの栓を開ける。
欧米文化の象徴のような飲み物に、プリントされたアラビア語。これもある意味、モロッコという国をよく表しているような気がする。
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