5日目のこと・2 ~トレドを歩く 本場でエル・グレコ地獄~ [はじめての複数国周遊~スペイン編~]
トレド旧市街に入り、ひとまず中心部とされているソコドベル広場へ。
マクドナルドがあったので迷わず入る。バスターミナルで朝飯の食い直しができなかった分、昼飯も兼ねてガッツリ食ってやろうと思ったが、まだモーニングメニューしかなく、しょうがないからクロワッサンとコーヒーだけでしのいでみる。ま、生きていくにはじゅうぶんなカロリー摂取量だから、よし。
さぁ、いよいよ本場でのエル・グレコ地獄だ。
サンタ・クルス美術館、カテドラル、サント・トメ教会と、エル・グレコ作品が展示されている場所を巡る。
縦に細長くデフォルメされる画風になったのは、“画家が乱視だったから”という説もあるようだが、それが意図したものでないのかどうか、なんにしろ、観る者は聖者を下から見上げているような感覚になるという、宗教画としては抜群の効果と、誰が観ても“エル・グレコの作品”とわかってしまえる個性的画風が生まれたという結果だけで、もうじゅうぶんだろう。信仰心は欠片もないわたしでも、なにかしらの神性をそこに感じ、ついにはこんな場所まで来させてしまうチカラが、エル・グレコの絵にはあると、そういうことだ。
倉敷で、大阪で、食い入るように見つめ、ヨーロッパ各地の他の美術館でも、展示されていれば異彩を放っていて目を離すことができなくなる、その絵を、画家が暮らした街で鑑賞していく。
こんな贅沢な話はない。
ヨーロッパに来てまでマクドナルドで飯をすませている惨めさなんぞ、小さいものである。
さて、エル・グレコの絵を観たことで、この旅の最大の目的は達成してしまったことになるのだが、まさかこれで帰るわけにはいかないだろう。カテドラルを出たあたりで――先程までの光景は夢か幻か――すでに雪は止んでいて、日差しまでチラホラと出始めてもいた。
よし、街歩きだ。
しかしこれが、なんというか――
――新鮮味に欠ける。
同じような街並みはシエナで散々見てきたのだ。
いや、同じどころではなく、あの鮮烈な“赤”のおかげで、シエナの記憶が、目の前のトレドの街並みの印象を薄くしてしまう。
そんなことをつらつらと考えながら、“エル・グレコの家”なる、画家の家やアトリエを再現した場所へ行ってみたら、改装中とのことで閉鎖されていた。ガイドブックには“2008年1月現在閉鎖中”とあったが、まさか1年経ってもまだ工事が終わっていないとは思いもよらなかった。
じゃそれなら、トレドの全景が見渡せるという、タホ川対岸のパラドールの方まで行ってみようかと思ったら――先程の日差しは夢か幻か――にわか雨が降ってきたり、また止んだり、現在地から徒歩で行くのはどうやら面倒そうだということが判明したり、最大の目的を達成したことで少々腑抜けてしまっていたりで、じゃ、ま、いっか、とあっさり諦め。目的は達成したとはいえ、まだその目的“地”にいるというのに、こうあっさり引き下がってはもったいないという気持ちもなくはないが、この後はマドリードに戻ってプラド美術館に行く予定でもあるし、体力温存しておくか。
バスターミナルへと向かう道程には、皮肉にも、もう雨も雪も降る気配はなかった。
マクドナルドがあったので迷わず入る。バスターミナルで朝飯の食い直しができなかった分、昼飯も兼ねてガッツリ食ってやろうと思ったが、まだモーニングメニューしかなく、しょうがないからクロワッサンとコーヒーだけでしのいでみる。ま、生きていくにはじゅうぶんなカロリー摂取量だから、よし。
さぁ、いよいよ本場でのエル・グレコ地獄だ。
サンタ・クルス美術館、カテドラル、サント・トメ教会と、エル・グレコ作品が展示されている場所を巡る。
縦に細長くデフォルメされる画風になったのは、“画家が乱視だったから”という説もあるようだが、それが意図したものでないのかどうか、なんにしろ、観る者は聖者を下から見上げているような感覚になるという、宗教画としては抜群の効果と、誰が観ても“エル・グレコの作品”とわかってしまえる個性的画風が生まれたという結果だけで、もうじゅうぶんだろう。信仰心は欠片もないわたしでも、なにかしらの神性をそこに感じ、ついにはこんな場所まで来させてしまうチカラが、エル・グレコの絵にはあると、そういうことだ。
倉敷で、大阪で、食い入るように見つめ、ヨーロッパ各地の他の美術館でも、展示されていれば異彩を放っていて目を離すことができなくなる、その絵を、画家が暮らした街で鑑賞していく。
こんな贅沢な話はない。
ヨーロッパに来てまでマクドナルドで飯をすませている惨めさなんぞ、小さいものである。
さて、エル・グレコの絵を観たことで、この旅の最大の目的は達成してしまったことになるのだが、まさかこれで帰るわけにはいかないだろう。カテドラルを出たあたりで――先程までの光景は夢か幻か――すでに雪は止んでいて、日差しまでチラホラと出始めてもいた。
よし、街歩きだ。
しかしこれが、なんというか――
――新鮮味に欠ける。
同じような街並みはシエナで散々見てきたのだ。
いや、同じどころではなく、あの鮮烈な“赤”のおかげで、シエナの記憶が、目の前のトレドの街並みの印象を薄くしてしまう。
そんなことをつらつらと考えながら、“エル・グレコの家”なる、画家の家やアトリエを再現した場所へ行ってみたら、改装中とのことで閉鎖されていた。ガイドブックには“2008年1月現在閉鎖中”とあったが、まさか1年経ってもまだ工事が終わっていないとは思いもよらなかった。
じゃそれなら、トレドの全景が見渡せるという、タホ川対岸のパラドールの方まで行ってみようかと思ったら――先程の日差しは夢か幻か――にわか雨が降ってきたり、また止んだり、現在地から徒歩で行くのはどうやら面倒そうだということが判明したり、最大の目的を達成したことで少々腑抜けてしまっていたりで、じゃ、ま、いっか、とあっさり諦め。目的は達成したとはいえ、まだその目的“地”にいるというのに、こうあっさり引き下がってはもったいないという気持ちもなくはないが、この後はマドリードに戻ってプラド美術館に行く予定でもあるし、体力温存しておくか。
バスターミナルへと向かう道程には、皮肉にも、もう雨も雪も降る気配はなかった。
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