3日目のこと・4 ~カフェ・ザッハー~ [はじめての複数国周遊~ウィーン編~]
ウィーンにおける最後の晩餐である。さぁ、なにを食ってやろうか。
アルベルティーナを出て、シュテファン寺院周辺をふらふらしてみる。
セルフ式のシーフードレストランがあり、なかなかに入りやすそうだったのだが、中を見るに席が空いてないようなので断念。
ま、マクドナルドでいいか――と、近くの店に入ろうとしたら――あぁそういえば――すぐ近くに昨日のイタリアンレストランがあるのを思い出し――ま、いいか、まずくなかったし――昨日と同じ、ボロネーゼで済ませてしまった。
ヨーロッパに来ておいてまで発揮している、この食へのこだわりの無さには我ながらどうしたもんだろうと思うが、ま、金もかからないし、いいか。
腹ごなしに、夜のウィーンを散歩。
ちょいと路地裏に入ってみたり。
この程度のことで満足できるのだ。金がかからなくていい。
さらに、やたらと装飾的な建築が並ぶリング沿いをぷらぷら。
王宮、美術史美術館から、国会議事堂前。
となりの市庁舎の前にはアイススケート場が施設されていた。
手をとりあう親子、カップル。しあわせそうな風景――けっ、しゃらくせー。こうしてひとり撮影しているのも、なんだか盗撮しているみたいに思えてきて、募る敗北感に耐え切れず、やってきたトラムに逃げ込んだ。
そして再びオペラ座。
その真裏。
ウィーンに来てからもう何度も通っていて――はたして、わたしのような汚い身なりの日本人男ひとりで入れる雰囲気なのか――じゅうぶんな下見だけはおこなっていた。
すでに夜の10時。
さぁ、そろそろウィーンにおける(美術品以外の)メインイベントを、最後の最後にこなしてやろうではないか。ウィーンに来て、ここに行かないわけにはいかないだろう。
食にこだわりがなくとも、コーヒーと甘いものは別なのさ。
時間が時間だけに客はまばら。“混雑のどさくさに紛れて勢いで入店”という手は使えない。入ったところでわたしの身なりの汚さばかりが際立つだろう。
入り口の前で躊躇するが、ええい、ままよ。旅の恥はかきすてだ。
入店すると、半ば強引にコートを預けさせられる。このへんは事前に情報を得ていたので戸惑わない。べつにクロークに預けるほど大そうなコートでもない。汚いウインドブレーカーである。それでも返却時にしっかり1ユーロ取られるというのも聞いていた。このような文化に慣れないわたしにはいまいち納得できないが、ま、しょうがない。そういうシステムなのだろう。日本の“お通し”みたいなものか。いや、そもそも「自分で持っているからいいよ」と断ればいい話なのかもしれないが、びびって流されるままにコートを預けてしまった。
席に案内され、着席。そして――
――あぁそうだ。旅の恥はかきすてだ。しょせんわたしも、いち観光客。躊躇なく注文してやりましたよ、ザッハートルテ。
で、これが、じつにどうってことない。
甘いのはおおいに結構なのだが、それがどうにもクドい甘さで、アプリコットジャムの酸味がなんとか抵抗しているものの、けっきょく負けてしまっている。
ひと口、ふた口くらいまではいいが、一個食い終わるころには、もういいや、と。
この店自体の雰囲気も、そりゃ高級ホテル・ザッハーのカフェだもの。格調がお高くて、わたしのような貧乏人には居心地が悪い。同じ格調高いカフェでも、ヴェネツィアのカフェ・フローリアンは居心地も良く、ぜひもう一度行きたいと思うが、こちらは一回来れば、もういいかな、と。
会計後、コートを受け取りにクロークへむかうと、これはよくわかっていない観光客対策なのか、わざわざ“1EURO”と表示されていた。こういうのは本来、“客のこころづけ”のはずだが、それが定額というのはどうしたもんだろう。そして、どんな状況であれ、それなりの格の店ならば、コートがあれば預けなければならないというのもマナーのひとつなのか。わからん。まだまだわたしも勉強が足りない。
ま、とりあえず、ウィーン最後の夜に異文化体験できてよかったなと、そういうことにしておこうか。
アルベルティーナを出て、シュテファン寺院周辺をふらふらしてみる。
セルフ式のシーフードレストランがあり、なかなかに入りやすそうだったのだが、中を見るに席が空いてないようなので断念。
ま、マクドナルドでいいか――と、近くの店に入ろうとしたら――あぁそういえば――すぐ近くに昨日のイタリアンレストランがあるのを思い出し――ま、いいか、まずくなかったし――昨日と同じ、ボロネーゼで済ませてしまった。
ヨーロッパに来ておいてまで発揮している、この食へのこだわりの無さには我ながらどうしたもんだろうと思うが、ま、金もかからないし、いいか。
腹ごなしに、夜のウィーンを散歩。
ちょいと路地裏に入ってみたり。
この程度のことで満足できるのだ。金がかからなくていい。
さらに、やたらと装飾的な建築が並ぶリング沿いをぷらぷら。
王宮、美術史美術館から、国会議事堂前。
となりの市庁舎の前にはアイススケート場が施設されていた。
手をとりあう親子、カップル。しあわせそうな風景――けっ、しゃらくせー。こうしてひとり撮影しているのも、なんだか盗撮しているみたいに思えてきて、募る敗北感に耐え切れず、やってきたトラムに逃げ込んだ。
そして再びオペラ座。
その真裏。
ウィーンに来てからもう何度も通っていて――はたして、わたしのような汚い身なりの日本人男ひとりで入れる雰囲気なのか――じゅうぶんな下見だけはおこなっていた。
すでに夜の10時。
さぁ、そろそろウィーンにおける(美術品以外の)メインイベントを、最後の最後にこなしてやろうではないか。ウィーンに来て、ここに行かないわけにはいかないだろう。
食にこだわりがなくとも、コーヒーと甘いものは別なのさ。
時間が時間だけに客はまばら。“混雑のどさくさに紛れて勢いで入店”という手は使えない。入ったところでわたしの身なりの汚さばかりが際立つだろう。
入り口の前で躊躇するが、ええい、ままよ。旅の恥はかきすてだ。
入店すると、半ば強引にコートを預けさせられる。このへんは事前に情報を得ていたので戸惑わない。べつにクロークに預けるほど大そうなコートでもない。汚いウインドブレーカーである。それでも返却時にしっかり1ユーロ取られるというのも聞いていた。このような文化に慣れないわたしにはいまいち納得できないが、ま、しょうがない。そういうシステムなのだろう。日本の“お通し”みたいなものか。いや、そもそも「自分で持っているからいいよ」と断ればいい話なのかもしれないが、びびって流されるままにコートを預けてしまった。
席に案内され、着席。そして――
――あぁそうだ。旅の恥はかきすてだ。しょせんわたしも、いち観光客。躊躇なく注文してやりましたよ、ザッハートルテ。
で、これが、じつにどうってことない。
甘いのはおおいに結構なのだが、それがどうにもクドい甘さで、アプリコットジャムの酸味がなんとか抵抗しているものの、けっきょく負けてしまっている。
ひと口、ふた口くらいまではいいが、一個食い終わるころには、もういいや、と。
この店自体の雰囲気も、そりゃ高級ホテル・ザッハーのカフェだもの。格調がお高くて、わたしのような貧乏人には居心地が悪い。同じ格調高いカフェでも、ヴェネツィアのカフェ・フローリアンは居心地も良く、ぜひもう一度行きたいと思うが、こちらは一回来れば、もういいかな、と。
会計後、コートを受け取りにクロークへむかうと、これはよくわかっていない観光客対策なのか、わざわざ“1EURO”と表示されていた。こういうのは本来、“客のこころづけ”のはずだが、それが定額というのはどうしたもんだろう。そして、どんな状況であれ、それなりの格の店ならば、コートがあれば預けなければならないというのもマナーのひとつなのか。わからん。まだまだわたしも勉強が足りない。
ま、とりあえず、ウィーン最後の夜に異文化体験できてよかったなと、そういうことにしておこうか。
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