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3日目のこと・3 ~ウィーンを“旅”する~ [はじめての複数国周遊~ウィーン編~]

 クリムトの『接吻』があるのはベルヴェデーレ上宮であるが、“上”があるのなら当然“下”もあり、下宮も美術品展示がされている。せっかくなら行ってやろうと思うが、上宮とは別料金で、開館時間も違う。下宮はこの日、夜9時まで開いているので、とりあえず後まわし。閉館時間が夕方の場所へ先に行くことにして、まずは、シェーンブルン宮殿で購入したシシーチケットで入場できるホーフブルク・旧王宮へむかう。

 旧王宮で見学できるのは、“皇帝の居室”と呼ばれる数十室と宮廷銀器コレクションなのだが、これがまた、数時間前にシェーンブルンでさんざん豪華絢爛なものを見てきたせいか、なんの驚きも感動もおこらない。銀器コレクションにいたっては、皿だ、ナイフだ、フォークだと食器類を見せられたところで――細工・装飾はまぁすごいかなとは思うが――「だからどうした」と。
 シェーンブルン同様、オーディオガイドの料金が含まれていて、入場時に貸与されるのだが(音声担当はシェーンブルンとは違う男女ふたりなのだが、これまたド素人で、かみまくり)、皇帝の居室はがんばってすべての説明を聴きながら見学したものの、銀器コレクションでいいかげん飽きてしまい、ガイドはすっとばして展示物を一瞥し、さっさと退場してしまった。時間ももったいない。

 しかし急いだとはいえ、すでに時間は午後5時に迫ろうとしていた。夕方のうちにあと2館、レオポルト美術館ウィーン・ミュージアムに行くつもりでいたのだが、どちらも閉館時間は午後6時。一方は諦めなくてはならないだろう。
 どちらか決められないまま、とりあえず王宮に近いレオポルト美術館の前まで行ってみると、最大の目玉、シーレの自画像が建物の壁面にでかでかと掲げられていた。
 もう一方のウィーン・ミュージアムはカールスプラッツにあり、何度か前を通っているのだが、そういえば、こちらにも最大の目玉、クリムトの『エミーリエ・フレーゲ』の巨大な垂れ幕が吊り下がってたっけか。

 さぁ、シーレかクリムトか――

 ――ほんの数時間前、ベルヴェデーレで『接吻』にいたく心酔してしまったわたしである。レオポルトにもクリムト作品はあるが、『接吻』にも描かれていたエミーリエの肖像画を、ここにきて観ないわけにはいかないだろう。シーレの顔の前を通り過ぎ、カールスプラッツへと向かった。

ウィーン・ミュージアム


 行ってみたら、なるほど、『エミーリエ・フレーゲ』の垂れ幕は、それが目玉というだけでなく、特別展示でエミーリエ・フレーゲそのひとについての特集をしていたためのものだった。なんたる僥倖。
 エミーリエが写された写真、エミーリエ自身がデザインしたという服やら家具やらが展示されていて、なかなかに興味深い。
 あぁしかし――閉館時間が迫っていた。
 その他にもクリムト作品は『パラス・アテネ』などあり、もっとじっくり観ていたかったが、悔しいかな時間切れ。
 この美術館は、もともと“歴史博物館”と呼ばれていたそうで、そのテの展示も多数あるのだが、まぁそのへんはかるく流しつつ、後ろ髪をひかれる思いで退館した。

 次は再びベルヴェデーレ。満を待して下宮へ――行ってはみたものの・・・。
 まず下宮で見学できるのは3部屋のみで、わたしにとっては特にグッとくる展示はなにもなく、別棟で開催されていた特別展示は――でた、宿敵モダンアート。せっかく金を払っているのだから、少しは理解する努力をしてみたものの、ダメだ、やっぱりわけわからん。15分とかからず退館してしまった。
 ちなみに、周辺には日本人にもおなじみの絵面のポスターがそこかしこに貼られていた。下宮では来週からミュシャ展が開催されるらしい。
 うん、まぁ、これを悔やんでも仕方あるまい。

 さて。
 まだだ、まだ終わらんよ。
 これで終わるわけにはいかない。本日は夜9時まで開いている美術館がもう1館ある。


アルベルティーナ


 アルベルティーナへ。

 入ってみると、王宮の一部を使用しながらも大胆に現代建築を取り入れているこの外観同様、展示も内装も新旧が入り混じっていて、なんだかクラクラする。
 上階と下階がモダンなつくりで、展示もモダンアート――こちらはモダンアートといってもピカソやらセザンヌやら印象派やらの馴染みあるもので、わたしにもじゅうぶん鑑賞対象となりうる展示であった。皮肉なことに、なかでもシーレの作品はたいへん興味深いものがあり、“あぁ、レオポルトに行ってもよかったかも・・・”と。
 中階は王宮そのままの内装で、展示は古典絵画を中心に展示されている。内装の印象は、少し前に見た旧王宮のものとまったく変わらず新鮮味はないが、絵がある分お得感はある。
 その絢爛豪華な一室に、ルーベンスとシーレのデッサンが並んで展示されていたりして、もうわけがわからなくなってきた。時空の感覚がゆらぐ。軽くトリップ。
 おれはいま何処にいるのか。ウィーンだよな。おぉ、おれいまウィーンにいるってすごくないか。うへへ・・・。あれ? “いま”っていつのことだ――

 ――うん、まぁ、疲れているのだろう。

 そう、疲れていないわけがないのだ。なにしろホテルで朝食を摂ってから、12時間以上なにも食べてない。飲んでもいない。これまで美術館、観光名所の数をこなすのに必死でメシどころではなく、疲労感の自覚もなかったが(イタリア旅行のときとは違って膝痛もないし)、ここにきてさすがに限界をむかえたか。
 自覚症状がないというのもかなり危険だろう。閉館時間も迫ってきたので、ここらで現実に戻り、カロリー摂取するべくアルベルティーナを出た。
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THIS IS IT2009年 11月15日 ブログトップ

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