SSブログ

3日目のこと・2 ~ベルヴェデーレ宮殿上宮・『接吻』~ [はじめての複数国周遊~ウィーン編~]

 シェーンブルン宮殿を出てから、地下鉄でカールスプラッツへ。そこからはそれなりの距離があるものの、散歩ついでに徒歩でむかった先は、ベルヴェデーレ宮殿

ベルヴェデーレ宮殿


20090204132651.jpg
 敷地に入ってみると、庭園の大部分が工事中。そういえばシェーンブルンの庭園も噴水が出てなかったし、シュテファン寺院も外装工事中だったし、やはり観光オフシーズンは、どの国に行ってもこんなもんなんだろう。
 ただ、わたしの目的は庭園にはない。ベルヴェデーレといえば、上宮の絵画コレクション、なかでもクリムト作品、そして『接吻』であろう。

 ひとは云う――それは「究極の愛のかたち」。
 断崖の淵で金色に融けあうふたり。そこに“死”が迫るからこそ、際立つ“生”――すなわち愛。

 観ていたら、どういうわけだか泣けてきた。

 本物の愛に触れた衝撃からなのか。
 いや――芸術から起こる感動というものは、そこに“共感”があってこそ生まれるのだろうと思うのだが、では、わたしは今までにこれ程までの狂おしい愛を授受したことがあったのかというと、こちらから一方的に愛を垂れ流すことはあっても、愛を享受した憶えはいっさいないので、誰がどう観ても愛し“合って”いるこの絵に共感できているのかといえば、やはり違う気がする。
 いやいや――そもそも“本物の愛”ってなんだ。おれにそんな崇高なものがわかるのか。仮に“愛”がわかったとしても、それは日本語の“愛”なだけで、この絵に描かれている“Love”だか“Liebe”だかがわかったことにはならないだろうし、もう途方がない。
 いやいやいや――“本物の愛”を知らなかったからこそ、その初めての邂逅に衝撃を受け、感動して泣いているのではないのか。
 いやいやいやいや――だいたい、感情と涙腺が直結しているわたしは、わずかに心が動いただけで涙を流すようにできている。もうそういう体質なのだ。だから、“有名な絵を肉眼で観ることができた”などといった、なんとも浅はかな理由で泣いているだけなのかもしれない。

 ――いや。理由はやはりどうでもよく。美術館の最大の見所であり、世界各国の観光客が絶えないその場所で、ひとりのバカな日本人に堂々と涙を流させるだけのチカラが少なくともその絵にはあると、まぁそういうことだ。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:旅行

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

人・形展2009年 10月18日 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。