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初日のこと・1 ~油断と過信~ [はじめての複数国周遊~ウィーン編~]

 とくになにもない。
 なにも起こらない。

DSC00066.JPG

 これでヨーロッパ旅行は3回目。決して多い数字ではないが、さすがにいろいろ慣れてしまった。
 成田への道のりも、成田での諸手続きも、ゲート前で出発を待つ間も、戸惑いはないし、特別な感慨も起こらない。
 もちろん、旅の高揚感はあるが、国内旅行のそれと変わりはない。
 チューリッヒまでのフライトも、チューリッヒでの乗り継ぎも、ことさら書くことはない。

 その場で危急的速やかに考えなければならないことがない。

 となると、その先に待ち受けていると予想される試練、危機的状況のことばかりを考えてしまう。スペインの治安とか、モロッコでの宿探しとか。「なにか楽しいことが待ち受けているはず」と期待に胸を膨らませることができない己の性格が呪わしい。

 スペインとモロッコのガイドブックに読み耽っているうちに、飛行機はウィーンに近づいてきた。近づいてしまった。
 最初の目的地なのに。ほんとうなら危急的速やかに考えなければならないことのなのに。
 なにも考えてなかった。

 とりあえずいちおうは、ホテルまでの道のりだけは頭に入れていたのだが。
 あとは、ウィーンほどの世界有数の観光地なら、治安はいいはずだし、英語も通じるだろうし、なにがあろうと、どうにかなるだろうと高をくくっていた。
 しかしそこはそれ。このノミの心臓のわたしである。いざウィーンが近づいてきたら、もうれつな不安感が襲ってきた。

 ヨーロッパ旅行に慣れていると思い込んで、図に乗っていたのだろう。
 英語が通じるっていったって、そもそも英語わからないじゃん、おれ。なにを血迷っていたのか。

 せめて挨拶やらの基本会話くらいはドイツ語を覚えておかなければまずいだろう。あぁまずいはずだ。そしてきっと死んじゃうんだ、おれ。あぁ死んじゃうんだ。
 到着に向け降下を始めた飛行機の座席で、あせったドラえもんよろしく、わさわさとかばんを漁る。

ひとり歩きの4ヵ国語会話自遊自在(ヨーロッパ編 2) 会話集
 あぁそういえばドイツ語ないよ、これ。








 そうだ、ガイドブックの後ろにドイツ語基本会話が載ってたはずだ。
 ついでにホテルまでの道のりも再確認しておこう。

オーストリア・ブダペスト・プラハ (わがまま歩き)
 いやまぁ、必要最低限の独語会話は勉強できたけども。

 わたしが持っていたのは、「とりあえず地下鉄路線がわかる地図さえあればいいか」と、ブックオフで105円で買った2001年版のものであった。古い。通貨表示もユーロではなくて、シリングである。とにかく古い。
 渡航前にインターネットで調べ、頭に入れていた市内交通などの情報を再確認しようにも、この古さではとてもじゃないが信用できない。「現地でどうにかなるだろう」と高をくくらせていた、謂れのない自信を喪失している今となっては、己の記憶力も信用できない。

 あぁ、きっとこのまま遠い異国の地で路頭に迷っちゃうんだ、おれ。

 不安が不安を呼び、増大していくまま。
 飛行機はウィーン・シュヴェッヒャート空港に到着してしまった。
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