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2日目のこと・6 ~好きなものは好きだからしょうがない~ [はじめてのイタリア~ひとりでぇできたぁ~]

 で、発車予定時刻5分前、これに乗り込んだのだのですよ。
 憧れのユーロスター。

 ユーロスターに限らず、イタリア鉄道の座席のほとんどは(地下鉄は別ね)、2列シート対面で4人分のボックス座席になっている(インターシティは3列6人ボックス)。
 このボックス座席。他の3席が同一グループで占められていたら、ヴェネツィアまでの3時間、かなり気まずい思いをしながら過ごすことになる。まぁイタリア語じゃわかりようもないし、話しかけられても「ワーカリマセーン」で通せば済むはなしだからそれはいいとして、問題は日本人に囲まれた場合だ。こういう場合、日本では当然無視するくせに、外国で日本人を見かけた途端、仲間意識でも芽生えて安心するのか、遠慮なく話しかけてくるという可能性が高い。
 ただ見たいものをこの目で見るためだけに、わたしは好きこのんでひとり旅をしている。べつに出会いなんぞ求めてないし、元来が人見知りの性格ゆえ、知らない人と話すなんてめんどうなだけだ。

 それに、そう。

 鉄道なのだ。

 移りゆく景色をながめ、列車が奏でるメロディに耳をかたむける。
 鉄道に乗ることは移動の手段というだけでなく、それ自体が目的でもある。
 頼む、察してくれ、一般のひとよ。悪いが邪魔しないでくれ。

 仮にこちらに話しかけてこなかったとしても、その場で話されることばが日本語であれば、自然と耳に入って頭に残り、気になってしまうもの。イタリアくんだりまでやってきて日本語など聞きたくない。
 ま、幸いにも、予約している席は窓際だ。ずっと窓に顔を向けて景色を眺めつづけていよう。
 とりあえず話しかけるなオーラを身に纏う準備をしながら席へむかった。

 わたしが乗った車両はほぼ満席。発車間際ということもあり、ボックスのわたしの席以外3席にはすでに客が着席していた。
 で、懸念していた相席メンバーの顔ぶれは、

 窓際でわたしの真向かいに、20代半ばでひとり旅と思しき日本人男性(日本語の文庫本を読んでいたので)。同じひとり旅なら、わたしの気分もわかるだろう。
 隣りで向かい合っているのはイタリア人老夫婦。典型的イタリア人であればおしゃべりは好きだろうが、ことばがわからなければ無理に話しかけてくることもないだろうし、大騒ぎすることもないだろう。
 ということで、抱いた懸念は杞憂に終わった。

 通路側に座る老夫婦に、
 「ぼんじょ~るの。えくすくーじ」
 と声をかけ、通してもらい、席に着く。
 で、待つこと数分。14:55。発車予定時刻になった。
 ・・・が、発車しない。
 いや、さすがだ。イタリアの鉄道はよく遅れるというが、噂どおり。まさか一発目で当たるとは思ってもいなかったが。

 15:10。まだ発車しない。車掌がイタリア語でなにやらアナウンスしているが、もちろんさっぱりわからない。

 15:20。いやさすがに遅れすぎだろう、と思っていたら、また車内アナウンス。すると、乗客たちが一斉に席を立ち、降車しはじめた。アナウンスの意味は、もちろん、あいかわらずさっぱりわからないのだが、他の乗客の動向を見るかぎり、どうやら車両交換らしい。どこか故障でもあったのか。
 日本なら、ここぞとばかりにクレーマーが出現して駅員に喚き散らしているところだが、イタリア人たちは「しょうがないよ」とただ肩をすくめ、あきれ顔をみせるだけで、交換車両が停車している別ホームへと移動していく。さすがイタリア、こんなこと日常茶飯事なのだろう。
 別に急ぐ旅でもないし、“鉄道に乗ることができればなんだっていい”という偏愛もあり、怒るいわれはまったくないわたしものんびり移動。
 ヴェネツィア、サンタ・ルチア駅行きの新たな発車時刻はどこにも表示されておらず、わからないのだが、こんな事態になって、すぐに発車するということはないだろう。ミラノからヴェネツィアまで3時間の乗車。急ぎ駅までやってきたため、そのための準備はしていないので、この間に売店へ行き、チョコレート、ビスケットなどの菓子類とコーラを買ってから、車両へ。
 席につき、さらに待つこと数十分。
 時刻は16:00。

 いよいよ、列車は予定より1時間遅れてヴェネツィアへと動きはじめた。

 発車からしばらくすると、車掌がやってきて検札。
 フランスのTGV同様インターネットで事前予約すれば乗車券は不要。もちろん、これも同様に予約していることの証明は必要なので、わたしはパソコンでプリントアウトした予約のQRコードを車掌にみせる。
 こんなやつ。

 ほんとうにこれだけでいいのか不安がないわけではなかったが、
 「フランスでだいじょうぶだったし、ここでもいけるだろう」
 という根拠の薄弱な自信を持っていた。

 そのまま車掌に紙を渡したら、手にもったスキャナーでコードをピピッ。
 で、車掌は紙を返しながら、
 「グラツィエ」

 わたしも受け取りながら
 「ぐらつぃえ」

 うん、やっぱりこれでだいじょうぶだった。

 ユーロスターは市街地を抜けても想像していたほどスピードは上げずに、イタリア北部、ロンバルディア地方の田園風景の中を走っていく。
 もちろん、細かいところまでみれば違ってくるが、景色や列車の全体的な印象をいえば、TGVに乗ったときのものとたいして変わりなく、新鮮味はあまりない。しかし、そこはそれ。ユーロスターに乗っているというだけで、わたしは満足である(いや、鉄道の旅をしているというだけでじゅうぶん幸せなのだ)。
 列車はブレシア、ヴェローナ、ヴィチェンツァ、パドヴァと、よく聞く名の街を過ぎ、その頃にはすっかり日も暮れていた。
 乗車時間は予定通りの3時間。到着時刻は1時間遅れで19時。
 ヴェネツィア、サンタ・ルチア駅に到着した。


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コメント 3

A

いいなー!いいなー!ユーロスター!!
ピピってやってもらいたい!グラツィエ!

あ〜、読んだらテンション阿上がっちゃった。
by A (2007-04-11 23:51) 

A

あ、なんか興奮で余計な阿が…。
by A (2007-04-11 23:52) 

homerun

 阿鼻叫喚の阿。
 落ちてみたいね、鉄道地獄。
by homerun (2007-04-12 19:15) 

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